本書の流れは日本の戦前から現代社会までの雇用労働の実態を全般的に述べている。現代日本の労働社会の深部の変化から生じた「雇用身分社会」を取り上げて、どういう経済的、政治的、歴史的事情が多様な雇用身分に引き裂かれた社会をもたらしたのかを明らかにすると共に、どうすれば真面な働き方を再建できるのかを作者の趣旨である。
序章は派遣社員が社員食堂の利用禁止の例によって、日本は雇用身分社会の事実を引き出した上で、パートの過労死やストレスと関係があるブラック企業の問題を言及した。「規制緩和」政策まだは第六章で雇用多様化の戦略と会わせて思い出したと、政府は雇用の枠から抜け出したいが、実際は派遣の恒久化になってしまうと考えている。因みに、概要の部分は私をよく参考させてきたので、書評に対して、非常に役に立ったと思う。
第一章で日本の戦前の雇用労働の視点から、明治、大正、昭和という時間軸の順で紹介し、女工の労働の辛さを触ってきて始めた。序章で言ったブラック企業いわゆる暗黒工場の長時間労働や過労問題を詳しく説明した。明治時代の寄生地主制度のせいで、女工の労働関係は工場と契約ではなく、仲介業者から送らせる。あるいは、仲介と工場と契約していて、労働者は労働場所しか知らない。しかし、親は賃金前借りの故、女工はどのような厳しさからの要因の辞職でも「正当解雇」せざるを得なく、また10歳未満の幼女さえ労働者もいるという未成年労働問題も酷い。大正時代まだ昭和の過酷を受け続いていた。そのため、工場法を改正し、特に未成年者の労働時間が12時間から11時間に減らし、十二歳以下を就職禁止されるという法律が出たが、実際には効果が著しいとは言えなかった。でも「満期賞金」や「年功割増金」の手当支給の場面が出現したことのは、賛否両論な時代だと考えている。昭和時代は大正とほぼ変わらず、長時間労働のみならず、休憩時間も少なく、食事の時間は30分しかなく、また女工に対する虐待、賃金低下という性別差別状況も存在していた。
第二章は、戦前の派遣の働き方の復活ことを経緯し、第一章と言う通り、労働者ための保護法が不十分なので、その「間接雇用」を大量に利用し、人材派遣会社を生れた。しかし、脅迫や監禁の強制労働、人身販売、ピンハネ、暴力団の介入の状況が少なくなかった。そのため、「労働者派遣事業」として管理するようになってきた。このことによって、なぜ労働市場の仲介業者の中間搾取を広がり、合法化になるのか?あの時、通信手段は単一、現場の求人が広く伝えにくく、いわゆる情報閉塞の原因だと考えている。そして、毛材社会の変化に応えて登場し発展して来た結果は「専門二十六業務」という派遣の単純作業の制度である。この制度は雇用の規制緩和もう一度明示することが分かる。
第三章はパートタイム労働の話題に注目している。世界のパートのデータとの比較と賃金、労働時間が著しく低下している。まだ、女性雇用戦略は25歳前にピークになり、出産のため減らし、もう一度戻すというM字型雇用カーブとして展示されている。これは性別や雇用形態の分業も存在していることを証明してきた。女性は低賃金な使い捨てのパートを最優先に考える。しかし、生活様式の普及と核家族化を背景に、共働き家族も多くなり、児童扶養手当や生活保護制度を利用できるが、僅かに足りないようだ。差別された雇用の代名詞ということを作者から証明した。まだその差別もう無視できないほどの問題だと考えている。
第四章は、正社員のことを展開している。日本の無限定正社員はサービス残業を含む長時間の残業を強いられる日本型である。その泥沼から抜け出したいなら、政府は活用化を必死するつもりと。何もやるべき無制限正社員から勤務条件を指定される限定正社員に転換してきた。職務、勤務地、労働時間などの選択肢がある限定正社員は元々の正社員の苦情が解消できるのみならず、非正規労働者に条件付きで正社員への変わりの道を開く機会も生み出した。したがって、これは奴隷的な終身雇用の日本雇用制度を改革する意味があると考えている。
第五章は戦後の雇用身分社会の貧困と格差の問題を述べた。派遣労働者法によって、派遣元と派遣先が責任を分担する義務があるが、作者の経験談より、元と先は賃金問題お互いに回避してしまった。このような弱い立場は搾取関係すぐ判明できた。それは、労働者階級と対立する資本家階級間の「階層社会」であると考えている。そして、階層社会に踏まえ、低所得層や非正規労働者の割合が徐々に上昇しなりつつある。それはコスト削減効果による短期的な業績回復や増益のリストラの原因だと作者から説明した。
第六章は第五章言及したコストを減らすため、政府は雇用形態の多様化すなわち規制緩和の方針を打ち出した。雇用の多様化の最大の狙いは人件費の削減と労働市場の流動化であった。そして非正規労働者の男性の未婚率は75.9%の高さに驚かせなく、日本の「男性仕事、女性家庭」の観念を入り、男性における社会の必要だと考えている。そして、公務員を削減しようという声があるが、年功序列制度と無関係ではない。もしかしたら、成果主義と掛けたら、削減ではなく、選抜からのコストはもっと優れだと考えている。
以上、書評が終わった。日本の雇用実態に興味があり、日本経済市場と労働者の関係を研究したい方はこの本を勧める。
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雇用身分社会 (岩波新書) 新書 – 2015/10/21
森岡 孝二
(著)
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労働条件の底が抜けた? 派遣はいつでも切られる身分。パートは賞与なし、昇給なしの低時給で雇い止めされる身分。正社員は時間の鎖に縛られて「奴隷」的に働くか、リストラされて労働市場を漂流する身分――こんな働き方があっていいのか。この30年ですっかり様変わりした雇用関係を概観し、雇用身分社会から抜け出す道筋を考える。
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2015/10/21
- 寸法10.7 x 1 x 17.3 cm
- ISBN-104004315689
- ISBN-13978-4004315681
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2015/10/21)
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- 言語 : 日本語
- 新書 : 256ページ
- ISBN-10 : 4004315689
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- 寸法 : 10.7 x 1 x 17.3 cm
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2016年3月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
貧困関連の新書は『子供の貧困(阿部彩)』『反貧困(湯浅誠)』『生活保護から考える(稲葉剛)』なども読んで居ますが、
この本は、豊富なデータを元に日本の貧困全体を俯瞰するためには必携の好著かと思います。
正社員総合職とフリーターの両方の経験がある者ですが、同じ人間が懸命に働いても、なぜこんなに差があるのかということを実感します。
今やそんな人は珍しくないとは思いますが、やはりフリーターに身を「堕とす」(と敢えて書かせていただきますが)と、
「総合職時代の自分の待遇・給料は、派遣の人や下請けの人から搾取したものだった」
ということを痛感します。
同じ人格・能力の人間でも立場が違うと、同じ人間であるように扱われない――、これが「身分」でなくてなんでしょうか。
日本は収入の多寡で行く店、読む本、着る服、付き合う人間、食べるもの、人生すべてが変わってしまう国となっています。
(東京は特にです。)そこにははっきりとした断絶があり、一つの国民とはとても呼べない様相を呈しています。
総合職の方は、総合職には総合職の苦労がある、自分の稼ぎは正当なものである、と仰る人が多いでしょう。そう信じたいでしょう。
自分も周囲にうつがでる職場で過労死レベルを超えて残業をしていたのでとても分かります。
しかしながらそれでも、非正規になると桁違いの「生きることそのものに響いてくる不安・やりきれなさ」に悩まされることになり、
「正社員が人間だとすれば自分は人間ではない。人間扱いされていない」と疎外を感じるようになり、
精神的重圧の量も質も、より耐えがたいものとなります。
経営者と総合職の生活または株主に渡る配当は、非正規の人生を奪うことで成り立っています。
治安を守っている物言わぬ非正規の忍耐と良心は、諸外国と比べれば涙ぐましいほどと思われます。
しかし報われぬ忍耐は精神病や自殺、異性を愛して次世代をはぐくむといった生物としての自然な行為の停止といった部分へ現れます。
自分の子供は、非正規の人の子供をはぐくむ権利を犠牲にして育ってきた。
と、胸を張って言えるでしょうか。
私は言えません。言いたくありません。
3月21日付けの日経新聞によれば、同一労働同一賃金を達成したオランダは、3年間に渡り平均賃金が4%下がったそうですが、
例えかりに1000万の給料が700万になろうが、700万の給料が500万になろうが、
同じ国に住む人間が希望を持って毎日働き、
新しい子供たちが生まれはぐくまれていくニュースに毎日触れられ、
そして外に出ればその風景が拡がっているという世界に住む方が、何倍も価値があるとは思いませんか。
そういう世界や国の方が、当たった宝くじを他の人に奪われないようにあくせくしている世界や国よりもよほど生きる喜びと価値があるものに見えませんか。
この本に提言されているように、国や企業が、もし本当にこの国の人々のことを思うのなら、やるべき事は既に見えています。
平均賃金が4%下がった程度で、誰も死にはしません。
しかしその4%を惜しんだために、多くの人が死んで来、また生まれてこないこととなります。
この本は、豊富なデータを元に日本の貧困全体を俯瞰するためには必携の好著かと思います。
正社員総合職とフリーターの両方の経験がある者ですが、同じ人間が懸命に働いても、なぜこんなに差があるのかということを実感します。
今やそんな人は珍しくないとは思いますが、やはりフリーターに身を「堕とす」(と敢えて書かせていただきますが)と、
「総合職時代の自分の待遇・給料は、派遣の人や下請けの人から搾取したものだった」
ということを痛感します。
同じ人格・能力の人間でも立場が違うと、同じ人間であるように扱われない――、これが「身分」でなくてなんでしょうか。
日本は収入の多寡で行く店、読む本、着る服、付き合う人間、食べるもの、人生すべてが変わってしまう国となっています。
(東京は特にです。)そこにははっきりとした断絶があり、一つの国民とはとても呼べない様相を呈しています。
総合職の方は、総合職には総合職の苦労がある、自分の稼ぎは正当なものである、と仰る人が多いでしょう。そう信じたいでしょう。
自分も周囲にうつがでる職場で過労死レベルを超えて残業をしていたのでとても分かります。
しかしながらそれでも、非正規になると桁違いの「生きることそのものに響いてくる不安・やりきれなさ」に悩まされることになり、
「正社員が人間だとすれば自分は人間ではない。人間扱いされていない」と疎外を感じるようになり、
精神的重圧の量も質も、より耐えがたいものとなります。
経営者と総合職の生活または株主に渡る配当は、非正規の人生を奪うことで成り立っています。
治安を守っている物言わぬ非正規の忍耐と良心は、諸外国と比べれば涙ぐましいほどと思われます。
しかし報われぬ忍耐は精神病や自殺、異性を愛して次世代をはぐくむといった生物としての自然な行為の停止といった部分へ現れます。
自分の子供は、非正規の人の子供をはぐくむ権利を犠牲にして育ってきた。
と、胸を張って言えるでしょうか。
私は言えません。言いたくありません。
3月21日付けの日経新聞によれば、同一労働同一賃金を達成したオランダは、3年間に渡り平均賃金が4%下がったそうですが、
例えかりに1000万の給料が700万になろうが、700万の給料が500万になろうが、
同じ国に住む人間が希望を持って毎日働き、
新しい子供たちが生まれはぐくまれていくニュースに毎日触れられ、
そして外に出ればその風景が拡がっているという世界に住む方が、何倍も価値があるとは思いませんか。
そういう世界や国の方が、当たった宝くじを他の人に奪われないようにあくせくしている世界や国よりもよほど生きる喜びと価値があるものに見えませんか。
この本に提言されているように、国や企業が、もし本当にこの国の人々のことを思うのなら、やるべき事は既に見えています。
平均賃金が4%下がった程度で、誰も死にはしません。
しかしその4%を惜しんだために、多くの人が死んで来、また生まれてこないこととなります。
2018年9月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
株主利益の極大化と言う圧力のもとで、政策的に、あるいは計画的に進められた労働者階級の階層分解が、見事に分析された一冊である。内容詳細は、他の方の優れたレビューがあるので、小生は約40年近いサラリーマン生活で得た、本書のテーマにかかわる体験を紹介したい。
① 10年ほど前の話だが、新規事業の計画を立てる時には、正社員800万円/年、非正規社員400万円/年でコスト試算していた。2倍のコスト差は、個々の経営者の良心で解決できる問題ではない。制度的に解消しなければならない。(金額は手取りではなく、会社の支出)。
② 正社員と非正規社員の能力差が、2倍あると言う事実はない。社会に出る時にレールに乗れたか否かの差である。だが、この点では、世間の見方は優しくない。学校でまじめに勉強しなかったからだ。有名企業や華やかな職業ばかり狙って地道な求職活動を嫌ったからだ。都心のキレイなオフィスにこだわったからだ。せっかく良い所に就職できたのになぜ辞めたのか。ブラック企業に入る人は調査不足だ。家族や友人からも言われてしまう。社会全体で考えるべき問題だ。
③ 同一労働同一賃金と、年功序列賃金を両立させる完璧な公式は無い。そこで年功序列賃金とその前提となっている終身雇用をやめようと言う動きが出る。絶対に許してはならない。小生も若い時は、労働組合員であった。1960~1970年代の労使には、「生首を飛ばすな」(指名解雇はしない)と言う暗黙の了解があった。総労働対総資本の対決と言われた三池炭鉱争議の教訓が生きていたのだ。こうして終身雇用が定着した。組合員の生計費を調査して、年齢別ポイント賃金を会社に要求し、40代後半の生計費ピークに合わせた賃金カーブが実現した。職場討議と団交が何回も繰り返された。日本の労働運動が獲得した世界に誇る成果だ。もちろん、会社側も、少しずつ勤続年数に合わせて賃上げを行うことで、従業員全体の意欲が向上する利点を認めていた。
④ 企業が損益分岐点を下げ経営を安定させる為には、固定費を下げる必要がある。固定費の主なものは、設備の減価償却費、労務費、一般管理費だ。人数や労働時間の調整が容易な非正規社員を採用することで労務費の比例費化をはかり、アウトソーシングによって一般管理費を削減することになる。このような手法が、法律や慣行により一般化していなかった1990年頃までは、日本企業は不況になると、大幅値引きで輸出攻勢をかけて雇用を維持した。「失業の輸出」として、欧米諸国から非難を浴びたものだ。国内的にも国際的にも、全ての労働者が安心して、納得の行く条件で働けるようにするのは、決して諦めてはいけないが、易しい事ではない。
① 10年ほど前の話だが、新規事業の計画を立てる時には、正社員800万円/年、非正規社員400万円/年でコスト試算していた。2倍のコスト差は、個々の経営者の良心で解決できる問題ではない。制度的に解消しなければならない。(金額は手取りではなく、会社の支出)。
② 正社員と非正規社員の能力差が、2倍あると言う事実はない。社会に出る時にレールに乗れたか否かの差である。だが、この点では、世間の見方は優しくない。学校でまじめに勉強しなかったからだ。有名企業や華やかな職業ばかり狙って地道な求職活動を嫌ったからだ。都心のキレイなオフィスにこだわったからだ。せっかく良い所に就職できたのになぜ辞めたのか。ブラック企業に入る人は調査不足だ。家族や友人からも言われてしまう。社会全体で考えるべき問題だ。
③ 同一労働同一賃金と、年功序列賃金を両立させる完璧な公式は無い。そこで年功序列賃金とその前提となっている終身雇用をやめようと言う動きが出る。絶対に許してはならない。小生も若い時は、労働組合員であった。1960~1970年代の労使には、「生首を飛ばすな」(指名解雇はしない)と言う暗黙の了解があった。総労働対総資本の対決と言われた三池炭鉱争議の教訓が生きていたのだ。こうして終身雇用が定着した。組合員の生計費を調査して、年齢別ポイント賃金を会社に要求し、40代後半の生計費ピークに合わせた賃金カーブが実現した。職場討議と団交が何回も繰り返された。日本の労働運動が獲得した世界に誇る成果だ。もちろん、会社側も、少しずつ勤続年数に合わせて賃上げを行うことで、従業員全体の意欲が向上する利点を認めていた。
④ 企業が損益分岐点を下げ経営を安定させる為には、固定費を下げる必要がある。固定費の主なものは、設備の減価償却費、労務費、一般管理費だ。人数や労働時間の調整が容易な非正規社員を採用することで労務費の比例費化をはかり、アウトソーシングによって一般管理費を削減することになる。このような手法が、法律や慣行により一般化していなかった1990年頃までは、日本企業は不況になると、大幅値引きで輸出攻勢をかけて雇用を維持した。「失業の輸出」として、欧米諸国から非難を浴びたものだ。国内的にも国際的にも、全ての労働者が安心して、納得の行く条件で働けるようにするのは、決して諦めてはいけないが、易しい事ではない。